研究分野

素粒子から宇宙まで、
未知なる原理を追求する。

物理学は、様々な自然現象を対象としている学問です。はるか昔から、人々は地上や宇宙で起こった現象に興味を持ち、そのメカニズムや法則を発見してきました。現代でも未知の自然現象はたくさんあり、研究者はそれらの現象を解き明かそうと日夜研究に没頭しています。物理学コースでは、物体の構造や性質を研究する物性分野、物質の根源を探究する素粒子分野、また広大な宇宙の謎に挑戦する宇宙分野など様々な研究が行われています。

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増井 孝彦 西山 雅祥 井上 開輝 石橋 明浩 太田 信義 千川 道幸 加藤 幸弘 堂寺 知成 近藤 康 笠松 健一 段下 一平 矢野 陽子

素粒子論・重力理論:太田 信義 [教授]

素粒子の統一理論と量子重力理論、超弦理論の研究。

現在の理論物理学における最大の問題、量子論と重力理論を融合させた量子重力理論を含む素粒子の相互作用の統一理論、その最も有力な候補である超弦理論の 研究を行っています。具体的には、超弦理論の背後にある基本的原理、統一的M理論の定式化、対称性の破れの機構、超弦とブレインを用いた通常の時空及び非 可換時空の場の理論の非摂動的性質の解明、さらに重力の量子効果が最も顕著に表れる極限的な状況として、初期宇宙やブラックホールへの応用とそれによる超 弦理論の検証を視野に入れた研究を行っています。

現在素粒子は左の図に示されているように、物質を構成するクォークとレプトン及びそれらの間の力を媒介するゲージ粒子がある。全部で36種類もの素粒子が存在し、これらの素粒子の標準的模型には、それらの質量やその間の相互作用定数がパラメーターとして入っており、理論的に不満足である。これらが右に示したような1種類の超弦で表されるとすれば、このような問題もなく、現在の理論物理学最大の課題である量子重力も構築できると考えられています。

素粒子論・重力理論研究室

量子制御:近藤 康 [教授]

未来のコンピュータ、量子コンピュータの研究

回転下の超流動ヘリウム、超低温での磁性、シリコン表面の研究をSQUID、NMR、STM等の様々な実験手法を駆使して研究してきました。超流動は量子力学的な効果が巨視的(人間が実感できる大きさ)な系に現れる非常におもしろい現象です。STMを使えば原子を直接「見る」ことが可能です。現在は高分解能NMR装置を使って将来のコンピュータとして期待されている量子コンピュータの研究を行っています。単なる理論にとどまらず小規模ですが実際に動作する量子コンピュータを用いて量子アルゴリズムを実装しています。また、量子コンピュータ研究のためのNMR装置の開発も行なっています。

上部は測定も取り込んだ量子テレポーテーションを行うための量子回路で、下部はNMR量子コンピュータで行った場合の測定結果です。

量子制御研究室

素粒子・宇宙物理学:千川 道幸 [教授]

極限宇宙を高エネルギー現象により探究

研究分野は宇宙から到来する素粒子の観測による宇宙の探究です。二つの国際共同研究に参加しています。一つはテレスコープアレイ(TA)実験で、10の20乗eVを超えるsuperGZK事象といわれる最高エネルギー宇宙線(UHECR)を米国Utah州で実験探索中です。もう一つはチェレンコフアレイ(CTA)計画で、天体起源の高エネルギー(UHE)ガンマ線の観測により宇宙を探究しようとするものです。この計画の観測装置は現在スペイン領ラ・パルマに建設が進んでおり、大型望遠鏡(LST)の開発に携わっています。さらに南半球にも建設予定で,全天観測が行われます。

素粒子・宇宙物理学研究室

ソフトマター物理学:堂寺 知成 [教授]

ソフトマターのタイリングとパターン形成

ソフトマター物理学は、20世紀末に成立した新しい物理学の1分野です。ソフトマターとよばれる物質群には、高分子、コロイド、液晶、界面活性剤、生体物質などがありますが、本研究室ではソフトマターの自己組織化現象に注目しています。自己組織化は生命現象の重要な性質であり、同時に分子をデザインしてさまざまな機能性材料を構築する手段と考えられています。 本研究室では計算物理学的手法を多用しながら実験家と共同しつつソフトマターの自己組織化の研究に新領域を創出することを目標として研究を行っています。これまでアルキメデス相、準結晶相、メゾスコピックダイヤモンド相、共連続相など、常識を打ち破る、しかも数学的にもエレガントな構造を次々発見し、研究を進めています。ソフトマター物理学だけでなく、固体物理学、光学、ナノテクノロジー、結晶学、数学、化学との境界領域を横断的に研究することも本研究室の特徴です。

高分子準結晶:高分子混合系で金属系の100倍のスケールの準結晶構造を発見しました。詳しくは次の記事をご覧下さい。
(参考:http://focus.aps.org/story/v19/st15及びhttps://academist-cf.com/journal/?p=6516)

ソフトマター物理学研究室

一般相対論・宇宙論:石橋 明浩 [教授]

一般相対論と宇宙

宇宙の起源とその進化といった宇宙全体のダイナミクスや、ブラックホールと特異点など、時空の大域的構造に関する問題を、主に一般相対性理論をもちいて解き明かす研究をしています。特に重力を含む自然界の全ての力を統一的に理解する試みである超弦理論は、宇宙がミクロには4次元よりもずっと多くの拡がりを持つ高次元時空として構成される可能性を示唆しています。本研究室では、この様な究極理論の構築を視野にいれ、高次元に特有な物理現象を重力理論・宇宙論の観点から探る目的で、高次元ブラックホールの基本性質や高次元理論に基づく宇宙モデルの研究を行っています。

高次元時空では、ドーナツ型をしたブラックホールなど、豊富な種類のブラックホールが存在し得る。どんな性質のブラックホールが可能かは、時空次元や対称性にも依存する。この様な高次元ブラックホールが安定かどうかの問題は、未だ十分に調べられていない。ドーナツ型のブラックホール(左図)は、不安定性により、デコボコしたブラックホール状態(右図)を経由して、さらに異なる終状態へとダイナミカルに変形してゆく可能性がある。

宇宙論:井上 開輝 [教授]

未知の物質「ダークマター」の謎に挑む。

宇宙における大部分の物質は光を発しない未知の物質「ダークマター」であると考えられています。その存在が指摘されて以来、すでに70年以上が過ぎようとしていますが、依然としてその正体は謎のベールに包まれています。では、どうやって光でみることのできない「ダークマター」を「みる」ことが出来るのでしょうか?

有力な方法の1つが、光が物質の重力によってその軌道が曲げられるため、物質の集まった場所を通る光が明るくなったり暗くなったりする重力レンズ現象です。また重力によって時空が歪み、時間の進み方が早くなったり遅くなったりすることで光の波長が変化する現象「重力的赤方偏移」も有力な方法です。井上研究室では、これらの「光におよぼす重力の効果」を用いてダークマターの分布や構造を解明することに力を注いでいます。

ダークマターの「つぶつぶ」効果のシミュレーション。左図はダークマターの分布がなめらかな場合、右図はつぶつぶな場合にそれぞれ対応。

宇宙論研究室

物性理論:笠松 健一 [准教授]

極低温の原子気体が示す量子多体現象の解明と制御

ナノケルビンという非常に低い温度領域まで冷やされた原子の気体はボースアインシュタイン凝縮という相転移を起こします。このボースアインシュタイン凝縮体における量子多体効果(特に超流動現象)を中心に量子凝縮系の物性に関する理論的研究を行っています。この系の特徴として、(1) ミクロな量子現象をマクロなスケールに出現させる (2) スーパークリーンな理想系である (3) 系のほとんどすべてのパラメータを自由自在に変調できる (4)量子光学の技術により、巧妙な量子凝縮状態の制御が可能である、などの優れた性質を持っている魅力的な人工物質です。これらの利点を利用して、種々の思考実験の実現や量子多体系の物理を基本的な立場から検証することが可能となり、また量子計算機実現などの応用面でも注目されています。

回転するボースアインシュタイン凝縮体における量子渦格子形成のダイナミクス

物性理論研究室

素粒子実験:加藤 幸弘 [教授]

高エネルギー粒子加速器で、宇宙の創生に迫る!

宇宙はビッグバンとよばれる高温高密度状態から誕生し、時間の経過とともに空間が膨張していると考えられています。宇宙が誕生したときはどうであったかを地上で研究するには、どうすればよいのでしょうか? 陽子と反陽子、電子と陽電子を粒子加速器で高いエネルギー状態にして各々を衝突させると、一瞬の間宇宙誕生時に近い状態にすることができます。この状態から生成される様々な粒子や反応を調べれば、宇宙が誕生した様子を予測することができるのです。このような研究ができる、電子・陽電子衝突型加速器(ILC)の実現に向けて、測定器の開発を世界中の研究者と協力して行っています。

次世代電子・陽電子衝突型加速器(ILC)の完成予想図

素粒子実験研究室

固体電子物理:増井 孝彦 [准教授]

超伝導体や磁性体の実験的研究

超伝導体や磁性体など、興味深い性質をもつ物質を対象とし、なぜその性質が発現するかを実験によって解明していきます。特に銅酸化物高温超伝導体の電子相図の理解と、高温超伝導と電子格子相互作用の関係を明らかにすることを目指し、輸送特性や光学特性の測定、同位体置換などの手法を用いて研究を進めます。物性は構成元素、結晶構造はもちろんですが、磁場や圧力などの外部パラメーターによっても変化するので、試料合成、測定の各段階でさまざまなアプローチ法があります。

高温超伝導体YBCOの単結晶。

生物物理学:矢野 陽子 [准教授]

生命現象を原子レベルで理解する

生命活動を担うタンパク質はアミノ酸が1次元のひも状に連なった分子です。例えばアミノ酸が100個連なると、3の198乗通りの立体配置が考えられますが、生体内のタンパク質は一瞬にして固有の立体構造をとり、その機能を発揮しています。現在のところは、アミノ酸の配列から立体構造を予測することは困難ですが、アミノ酸には極性を持つもの(水に溶けやすい)と持たないもの(水に溶けにくい)があり、水の中では大抵、非極性の部分を内側に折り畳んだ構造をとっています。ところが、空気に触れると、非極性の部分を外側に出すように変性します。我々は、スプリング8の世界最高輝度のX線を使い、このような変性過程で起こる構造変化を原子レベルで観測することによって、タンパク質の立体構造形成のメカニズムに迫ろうとしています。また、タンパク質の動きを捉えるための実験手法自身の開拓も行っています。

タンパク質が気液界面で構造変化を起こす様子。青:正電荷、赤:負電荷、緑:非極性 (Yano et al., J. Phys. Chem. Lett. 2011, 2, 995)

生物物理学研究室

量子多体物理学:段下 一平 [准教授]

量子多体系を記述する理論手法の開発とその応用

物の性質を対象とする物性物理学の中で、量子力学的な性質が顕在化しているものに興味を持って研究しています。例えば、固体中の電子集団や液体ヘリウムの性質は量子力学に従う多体系であり、量子力学の法則を使わずには説明できません。これらの物質では、量子性と相互作用の協奏によって、超流動、超伝導、量子相転移、多体局在など、さまざまな興味深く非自明な物理現象が現れます。本研究室では、理論物理学の立場から量子多体系を調べ、既存の物理現象の深い理解と新奇な現象の発見を目指しています。冷却気体を用いたアナログ量子シミュレータ開発を理論面からサポートするという、ユニークな研究も行っています。

量子多体系の時間発展を記述する手法のグラフ表示。

量子多体物理学研究室

生命動態物理学:西山 雅祥 [准教授]

生体分子機械の動作原理の解明

私達の体の中では、タンパク質やDNAなどの様々な分子がはたらくことで生命活動が営まれています。こうした生体分子は、周りをとりまく水分子の衝突にともなう激しい熱揺らぎにさらされながらも、自発的に構造を形成し駆動する高性能の分子機械にほかなりません。その詳細なメカニズム、すなわち、物理法則は未だ明らかにされていません。私達は生体分子と水との相互作用を変えることができる高圧力技術に着目し、世界にさきがけて高精細な像を取得できる高圧力顕微鏡法を開発してきました。この顕微鏡を用いることで、細胞内ではたらく分子機械のダイナミックな動態が次々に明らかになってきました。フォースに対する応答を通じて、生きものらしさを分子レベルで司る物理法則を明らかにするのが研究のゴールです。

世界にさきがけて開発した高精細な画像を取得できる高圧力顕微鏡。関連特許取得、市販化を通じて計測手法の普及に努めています。