生物物理学とは

生物物理学とは、生命が織りなす様々な現象や性質、それらの背後に潜む普遍的な法則を物理学の手法や考え方を用いて探求する学問分野です。生物物理学は、生体を構成する分子から生物個体の集団まで幅広いスケールの生命構造を扱います。1950年代にジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックはDNAの二重らせん構造を発見し、遺伝の仕組みを解き明かすことに成功しました。これは、20世紀の生命科学における最大の発見とされています。実は、DNAの構造を調べるために使われたのは、「X線回折法」という物理学の手法でした。近年、生物を構成する分子の物理的な構造や性質が明らかにされつつあり、機械的動作をする分子の集合体は分子機械とも呼ばれています。こうした分子機械の性質や役割を明らかにし、それらを組み合わせることによって全体としての生命活動を理解しようとする試みは、物質を単純な要素に分割し、複雑な現象を統一的に説明するという物理学の考え方そのものと言えます。

近畿大学 理工学部 理学科 物理学コースには、「物理のこころと技」を活かして、「生命とは何か」に迫る2つの研究室があります。生物物理学研究室では、心臓の拍動や呼吸にみられるリズム現象がどのように生みだされるのか明らかにするため、人工細胞膜を使ったリズム現象の実験的研究を行っています。生命動態物理学研究室では、分子機械や細胞を取り巻く環境が変わると、そのはたらきがどのように変わるのか調べる新しいイメージング技術を開発しています。

このように生物物理学の分野は多岐に渡っています。生命の不思議のどこに着目し、どんな手法で研究を進めるのか、独創的なアイデアが求められる比較的新しい学問分野です。皆さんも是非生物物理学にチャレンジして下さい。