SEMINAR

2021年度博士課程中間(および総合理工マスターズ代替)発表会2(一般相対論・宇宙論研究室)

講演日:2021.07.09 (Fri)

講演者

上田航大、山口大輝  

講演内容

総合理工マスターズ代替発表会2 一般相対論・宇宙論研究室 博士中間発表会
令和3年7月12日(月)4限目 於31-301教室 およびオンライン

〇プログラム:
▷D3理工マスターズ発表会: 30分講演(質疑応答含む)  司会:D1松本 怜
15:00—15:30 上田航大   
15:30—16:00 山口大輝   

〇Zoom URL
https://testkindai.zoom.us/j/93926767249?pwd=OW44TTBPblp4MUNUb2dZUkJrbGkvUT09

ミーティングID: 939 2676 7249
パスコード: 055059

〇講演者・題目・概要

講演者:上田 航大
題目 : 「Massless topological black hole時空上の有質量ベクトル・テンソル場のダイナミクス」
概要:近年、AdS/CFT対応の文脈により、重力理論においてAdS時空の解析が盛んに行われてきた。例えば漸近AdSブラックホール時空上のボソン場が、CFTにおける系の熱平衡状態や超伝導状態を記述する事[1, 2]、また臨界ブラックホール時空のホライズン近傍領域で現れるAdS_2時空がCFTを理解するtoyモデルとして利用されている事など[3], これまで様々な応用例が考えられている。一方で宇宙物理学的にも、漸近AdSブラックホール時空上のスカラー場がスーパーラディアンス不安定性を引き起こすことが予測されているなど、ストリング理論に加え、宇宙物理学の両方の文脈においても、今後さらに漸近AdSブラックホール時空上の多種多様な場を予め解析しておくことが重要となる。そこで今回は最も解析しやすいpure-AdS時空のなかでもtopological black holeが現れる断面曲率K=-1の場合に着目し、スピン0, 1, 2の自由場のダイナミクスを解析する。一般に、有質量場の方程式は複数の未知変数が複雑にカップルしたままであり解析が困難であるが、文献[4, 5]では有質量ベクトル場のベクトル型成分及び有質量テンソル場のテンソル型成分についてデカップルした常微分方程式(マスター方程式)が導出されている。そこで文献[4, 5]の結果を用いて、massless topological black hole時空のダイナミクスを求める。各場の方程式の大域解の構成法、境界条件によって異なる不安定条件、そして準固有振動の解析について紹介する。

参考文献
[1] G. T. Horowitz and V. E. Hubeny, Phys. Rev. D 62, 024027 (2000).
[2] S. S. Gubser, Phys. Rev. D 78, 065034 (2008).
[3] M. Guica, T. Hartman, W. Song, and A. Strominger, Phys. Rev. D {\bf 80}, 124008 (2009).
[4] K. Ueda and A. Ishibashi, Phys. Rev. D {\bf97}, 124050 (2018).
[5] V, Cardoso, T. Igata, A. Ishibashi, and K. Ueda, Phys. Rev. D {\bf100}, 044013 (2019).



講演者: 山口大輝
題目: 「量子補正した静的荷電ブラックホール」
概要: 漸近安全な量子重力理論を用いて、重力の量子効果を静的球対称時空に取り入れると、量子補正したシュバルツシルト時空の中心はド・ジッター核となって、中心の特異点が解消される[1]。量子重力だけに関わらず電磁場等であっても、量子補正を行うという事は、結合定数の効果を時空の計量や、ポテンシャルに取り入れる事と考える。量子補正の方法は、繰り込みを記述するエネルギースケールと古典時空の固有距離によって与えられるが、近年では、古典時空の曲率であるクレスチマンスカラー量を用いて、量子補正の方法が提案されている[2]。一方で、場の量子論において、電磁場の繰り込みを行うと、高エネルギー領域で結合定数(電荷)が発散してしまうランダウ極が存在することが知られているが、重力の量子効果を電磁場に取り入れる事で、結合定数である電荷は漸近安全になる事が示された[3]。
 本研究では、重力の効果を電磁場に取り入れて、電荷の漸近安全な解の構築を行って、重力の結合定数と共に、静的荷電ブラックホールの量子補正を行った。その結果、量子補正した静的荷電ブラックホールの中心はミンコフスキー核となっていて、正則なブラックホール解となっている。また、量子補正の一般論を考える事で、ブラックホールの中心がミンコフスキー核、ド・ジッター核、反ド・ジッター核、弱い中心特異点となるような量子補正の条件を求めた[4]。

参考文献
[1]A. Bonanno and M. Reuter, Phys. Rev. D 62, 043008 (2000) [arXiv:0002196[hep-th]].
[2]J. M. Pawlowski and D. Stock, Phys. Rev. D 98, 106008 (2018) [arXiv:1807.10512[hep-th]].
[3]A. Eichhorn and F. Versteegen, JHEP 01, 030 (2018) [arXiv:1709.07252[hep-th]].
[4]A. Ishibashi, N. Ohta, and D.Yamaguchi, arXiv:2106.05015[hep-th].

開始時間及び場所

令和3年7月12日(月)4限目 於31-301教室 およびオンライン
司会:D1松本 怜
15:00—15:30 上田航大   
15:30—16:00 山口大輝