SEMINAR

石政先生の準結晶講義

講演日:2017.06.06 (Tue)

講演者

石政 勉氏(公益財団法人 豊田理化学研究所)

講演内容

(1)「準結晶、近似結晶とは何か? 12回対称の場合」
 同じ辺の長さの正方形と正三角形タイルを平面に隙間無く埋める幾何学の問題を考えましょう。「隙間無く」という条件と、タイルが2種類あるという自由度のために、この問題は意外とおもしろいです。正方形と正三角形をいくつか組み合わせて、繰り返しの単位をつくり、それを周期的に繋いで行くという事を考えついた人もいるでしょう。これが、物質の世界での結晶です(準結晶の分野では、これを特に近似結晶と呼んでいます)。それでは、「隙間無く」しかもデタラメにタイル張りすることはできるでしょうか?あるいは、繰り返しの周期は持たないが、ある決まった規則でタイル張りするということはできるでしょうか?さらに、そういったタイル張りを原子の配置として実現できるでしょうか?これらの疑問の答えが、正12角形準結晶です。ここでは、Mn基の合金として形成した正12角形準結晶を紹介します。

(2)「正20面体準結晶の謎」
 結晶は、定まった繰り返しの周期をもつ等差数列的な構造ですが、準結晶はある無理数を公比とする等比数列的な構造です。正12角形準結晶では、その無理数は2+√3でしたが、
正20面体準結晶では、黄金比(1+√5)/2が重要な役割を担います。このような等比数列的な秩序が実際の原子配置としてどのように実現しているかは、今も完全には分かっていない「大きな謎」です.まず、黄金比と5回対称の関係を図形的に考え、次に正20面体対称の多面体を原子で形作ること、それらをマトリョーシカのように入れ子にしてクラスターを作ることを考えましょう。ここでは、現実の正20面体準結晶や近似結晶において、このようなクラスターがどのように構成されていて、それらがどのように配置しているのか?を紹介します。

*石政先生は1985年正12角形準結晶の発見者として歴史に名前を残しておられる世界的な研究者です。最近は出口、佐藤ら名大グループと量子臨界性を持つ準結晶や、超伝導を示す近次結晶を発見して、物性物理学の新たな台風の目となっています。北海道大学をこの3月にご退職になり、4月より豊田理化学研究所のフェローを務めておられます。研究者としてますますパワーアップしていますが、今回お時間をいただけるとのことです。
「石政先生の準結晶講義」を聞かずして準結晶を語ることはできないでしょう。

開始時間及び場所

日時:6月6日(火)
(1)15時00分~16時20分 (2)16時40分~18時00分 
場所:近畿大学理工学部31号館505室