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: 物質中の静磁場の基本法則 : 物質中の電界と磁場 : 問題3.4.9   目次

磁性体

物質が磁場の影響で磁気双極子を持つようになる現象のことを、物質の磁 化と言う。単位体積当たりの双極子モーメントの和を磁化ベクトルと呼 ぶ。誘電体の場合と同様に磁化の原因としては、2種類考えることができる。

  1. 物質の構成要素(原子や分子)が磁気双極子を持っている場合。その磁 気モーメントの起源は通常電子の持つ磁気モーメントである。外部 から磁場が作用していない場合、この磁気双極子は乱雑な方向を向いて いるために、巨視的にみると(物質全体としては)双極子は存在しないよ うに見える。しかしながら、外部から磁場が作用とすると、全体的に原 子や分子の双極子が磁場の方向を向き、外部からもその存在が明らかに なる。
  2. 物質の構成要素(原子や分子)が磁気双極子を持っていない場合。 磁場が作用していない場合は、原子や分子を見ても磁気双極子は 存在しない。ところが、このような原子や分子を磁場中におくと、磁気 双極子を持つようになる。しかしながら、この場合、生じる磁気モーメ ントは磁場と逆向きになる。

通常の物質は第1の機構が第2の機構に勝り、磁場をかけるとその方向に磁気モー メントがあらわれる。このような物質のことを常磁性を示す物質という。 まれには、第2の機構しか働かない物質もあり、反磁性を示すという。

強磁性という性質を示す物質もある。例えば、鉄やニッケルである。 この場合、磁場中において非常に大きな磁気モーメントを示す。これは、先の二 つの機構とは異なった量子力学的な効果の現れである。この場合、磁区 と呼ばれる領域で原子の磁気モーメントが磁場がない時にも揃っている。この磁 区の大きさは光学顕微鏡で見ることができる程度であり、多数の原子を含んでい る。マクロな鉄やニッケルの固まりでは、磁区毎の磁気モーメントの向きはラン ダムなので、磁場がないときは外部に磁気モーメントは現れない。ところが、磁 場をかけると磁区の磁気モーメントの向きが揃うので、外部に大きな磁気モーメ ントが現れる。永久磁石はこの磁区のモーメントが磁場のない状態でも揃 うように工夫した物質である。

完全反磁性を示す超伝導体については、3年生の固体物理の講義で 説明があるでしょう。



Administrator 平成25年7月6日