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: 電磁波 : 電磁場のエネルギー : 電磁場のエネルギー   目次

問題3.3.4

半径$R$の円形の平行平板キャパシターに最初電荷$Q_0$が蓄えられていた。外部 に回路(具体的には、抵抗$R_0$)をつなぎ、時刻$t$に電流$I(t)$が流れたとする。
\includegraphics[width=8cm]{f8-a.eps}
準備として、時刻$t$における回路の電流$I(t)$を求めよう。 微分方程式

\begin{eqnarray*}
\frac{Q(t)}{C} = R_0 I(t)
\end{eqnarray*}

を解けば良い。ただし、

\begin{eqnarray*}
I(t)= - \frac{d Q(t)}{dt}
\end{eqnarray*}

であることに注意。答えは

\begin{eqnarray*}
I(t) = I_0 e^{-t/\tau}
\end{eqnarray*}

となる。ここで、$\tau = RC$$I_0$は時刻$t=0$における電流である。

  1. 極板間に生じる変位電流密度を求めよ。
  2. 極板間に生じる磁束密度を求めよ。
  3. 極板間に生じるポインティング・ベクトルを求めよ。
  4. 極板間に生じるポインティング・ベクトルにより、 極板間から抜け出す電磁場のエネルギーを求めよ。 極板間の距離を$D$とする。
  5. 抵抗$R_0$は長さ$\ell$の抵抗線である。キャパシターとこの抵抗をつなぐ 導線の抵抗は無視できるとして、抵抗線の周囲のポインティング・ベク トルを求めよ。ただし、抵抗線の長さ$\ell$に対して十分近くの様子を 考察する。
  6. 抵抗のない導線の周囲にできるポインティング・ベクトルは、 導線から十分遠方でゼロになることを示せ。
  7. エネルギー保存の観点から、回路全体の周囲のポインティング・ベクトルの振 る舞いを考察せよ。

===== 解答 =====

  1. 変位電流の密度は$I(t)/\pi R^2$となる。

  2. アンペールの法則より、

    \begin{eqnarray*}
\mu_0 \frac{\pi r^2}{\pi R^2}I(t) = 2 \pi r B(r, t)
\end{eqnarray*}

    となるから、

    \begin{eqnarray*}
B(r, t) = \frac{\mu_0 r }{2 \pi R^2}I(t)
\end{eqnarray*}

    となる。
  3. 電界は面に垂直で大きさは

    \begin{eqnarray*}
\frac{Q(t)}{\varepsilon_0 \pi R^2}
\end{eqnarray*}

    一方、磁束密度は円周方向に大きさ

    \begin{eqnarray*}
\frac{\mu_0 r }{2 \pi R^2} I(t)
\end{eqnarray*}

    である。したがって、ポインティング・ベクトルの向きは 放射状外向きになって、その大きさは、

    \begin{eqnarray*}
\frac{r }{2 \pi R^2} I(t) \frac{Q(t)}{\varepsilon_0 \pi R^2}
...
...frac{1}{4\varepsilon_0 }\frac{r}{(\pi R^2)^2}\frac{d Q^2(t)}{dt}
\end{eqnarray*}

    となる。ここで、$Q(t)$は時間の増加に伴って減少する関数だから、 全体としては正になっていることに注意。
  4. 極板間から抜け出すエネルギーを計算するために、円周方向 と極板方向に積分すると、

    \begin{eqnarray*}
&& D \int_0^{2 \pi}
-\frac{1}{4\varepsilon_0 }\frac{R}{(\pi R...
...D \frac{1}{2\varepsilon_0 }\frac{1}{\pi R^2}\frac{d Q^2(t)}{dt}
\end{eqnarray*}

    となる。極板方向の積分は長さ$D$をかけることに対応する。 ここで計算した量は単位時間当たりにエネルギーが抜け出す割合に なっていることに注意すること。したがって、時刻$t=0$から$t=\infty$までに 抜け出すエネルギーを求めるためには、時間に関して積分を行わないと いけない。

    \begin{eqnarray*}
&& \int_0^{\infty}
-D \frac{1}{2\varepsilon_0 }\frac{1}{\pi ...
...{C}\int_0^{\infty} d Q^2(t) \\
&=& \frac{1}{2}\frac{Q^2(0)}{C}
\end{eqnarray*}

    となる。ここで、 $C = \varepsilon_0 \pi R^2 /D$を用いている。
  5. 導線の周囲の磁場はアンペールの法則より、

    \begin{eqnarray*}
B(r,t)= \frac{\mu_0}{2 \pi r}I(t)
\end{eqnarray*}

    である。一方、電界は導線に沿って生じている。導線のすぐ外側の電界も 導線に対して並行になっていると期待される。また、電界の大きさは、

    \begin{eqnarray*}
E(r,t)=\frac{R_0 I(t)}{\ell}
\end{eqnarray*}

    となる。ポインティングベクトルの大きさ$S$は、

    \begin{eqnarray*}
S &=& \frac{1}{\mu_0}E(r,t)B(r,t) \\
&=& \frac{1}{\mu_0}\frac{R_0 I(t)}{\ell} \frac{\mu_0}{2 \pi r}I(t)
\end{eqnarray*}

    となる。また、その向きは導線に向かって入って来る向きになっている。

    導線全体で単位時間に入って来るエネルギーを求めるために、積分を行うと

    \begin{eqnarray*}
\int S d\ell r d\theta
&=& \int \frac{1}{\mu_0}E(r,t)B(r,t)...
...ell} \frac{\mu_0}{2 \pi r}I(t)
\ell r 2 \pi \\
&=& R_0 I^2(t)
\end{eqnarray*}

    となる。

  6. 抵抗が存在しないので、導線に沿って電界は生じない。電界が存在 しなければ、ポインティングベクトルもゼロである。

  7. コンデンサーの極板の間から抜け出したポインティングベクトルが空間を通って、 抵抗に戻って来るようになっている。



Administrator 平成25年7月6日