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: 静電場の微分法則 : 電場の性質 : 問題2.2.19   目次


電束

静電場は目に見えず、直感的に理解することが難しい。そこで、 水の流れとの対比を行うことによって、理解の助けとしよう。 空間中に水の流れを考えると、空間の各点毎にそこを流れる水が存在する。 言い換えると水の流れを規定するためには、各点毎に流速を表すベクトルを 決める必要がある。このように、各点毎にベクトルが与えられるような空間を ベクトル場と呼ぶ。水の流れの場を $\vec{v}(\vec{r})$と表すこととしよう。 ある閉曲面$S$を考えて、そこでの流速の面積分

\begin{eqnarray*}
\int_S \vec{v}(\vec{r})\cdot d\vec{S}
\end{eqnarray*}

を考えよう。この面積分はこの閉曲面の中に水のわき出し$f(\vec{r})$の総量に 等しいはずである。式で表すと、

\begin{eqnarray*}
\int_S \vec{v}(\vec{r})\cdot d\vec{S} &=&
\int_V f(\vec{r})   dV
\end{eqnarray*}

となる。ここで、$V$は閉曲面$S$で囲まれる体積である。

真空中の電場$\vec{E}$に対して

$\displaystyle \vec{D}=\varepsilon_0 \vec{E}$     (2.36)

となるベクトルを定義し、「電束密度」と呼ぶ。 ガウスの法則は以下のようになる。
$\displaystyle \int_S \vec{D} \cdot d\vec{S} = \int_V \rho(\vec{r})dV$     (2.37)

となる。 $ \int_V \rho(\vec{r})dV$は面$S$に囲まれた体積$V$の中に存在する 全電荷量になっている。水の流れと比較すると、 $\vec{v} \leftrightarrow \vec{D}$ $f \leftrightarrow \rho$となっている ことがわかるであろう。

静電場の場合、電荷が存在しなければ $\vec{D} =\vec{0}$である。水の流れ場の 場合はわき出しが存在しなくても、 $\vec{v} \ne \vec{0}$となる場合がある。 それは渦が存在する場合である。渦がある条件は

\begin{eqnarray*}
\int_c \vec{v}\cdot d\vec{s} \ne 0
\end{eqnarray*}

と表すことができる。ここで$c$はある閉曲線であり、上の式は閉曲線$c$に 沿っての線積分である。 従って、静電場と水の流れ場との対比を完全に するためには、静電場では渦がないという条件
$\displaystyle \int_c \vec{D}\cdot d\vec{s} = 0$     (2.38)

が必要となる。



Administrator 平成25年7月6日