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: SiやGeなどの半導体 : バンド構造 : バンド   目次

電気伝導とバンド構造

完全に電子で詰まっているバンドでは、ある電子が左に動くと他の 電子は右に動いているはずである。従って、このバンドは電気伝導に寄与する ことはない。一方、電子の存在しないバンドでは、電気伝導は起こりようがない。 従って電気伝導に寄与するバンドは完全には詰まっていないバンドである。

金属とは絶対零度でも完全につまっていないバンドが存在する物質である。 金属では温度が上昇すると、原子が振動し電子の運動を妨げるようになる。 従って、金属の場合電気伝導度は温度上昇に伴い減少する。

絶縁体は完全に電子で詰まっているバンドと全く電子の存在しないバンドのみを 持った物質である。先の議論のように電気は流れない。

半導体の持つバンド構造は絶縁体のバンド構造と同じである。違いは完全に詰まっ ているバンドと詰まっていないバンドのエネルギー差が小さく、電子が熱エネル ギーを得ると、完全に詰まっているバンドから詰まっていなかったバンドに 飛び移ることができる点である。従って、熱エネルギーの小さい低温では、半導 体は絶縁体となり、絶縁体と半導体の本質的な違いは存在しない。また、半導体 では温度の上昇に伴い電気伝導に寄与する電子と正孔が増えるので、電気伝導度 は大きくなる。

絶縁体と金属の違いは電気抵抗の大きさではなく、その機構によって区別される べきである。 別の言い方をすれば、温度が上昇した時電気抵抗が大きくなる物質は「金属」と 呼び、電気抵抗が減少する物質は「半導体(絶縁体)」と考える。



Administrator 平成25年1月3日