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: スピンエコー : NMRの原理 : 回転磁場   目次

ブロッホ方程式

熱平衡状態における磁化は $\vec{M}_0=(0,0,M_0)$であり、緩和現象を 考慮しなければならない。ここで、現象論的なブロッホ方程式
$\displaystyle \frac{d \vec{M}}{dt}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \gamma \vec{M} \times \vec{B}_0 - \Gamma (\vec{M}-\vec{M}_0),$ (11.3)
$\displaystyle \Gamma$ $\textstyle =$ $\displaystyle \left( \begin{array}{ccc}
1/T_2 & 0 & 0 \\
0 & 1/T_2 & 0 \\
0 & 0 & 1/T_1
\end{array} \right)$  

を導入しよう。ここで、$T_1$$T_2$は縦(スピン−格子)および横(スピン− スピン)緩和時間と呼ばれる。 右辺の第2項 $-\Gamma (\vec{M}-\vec{M}_0)$は熱平衡状態に戻っていく力を 与える。

$T_2 \ll T_1$はNMRにおいてしばしば起る。そのような場合の磁化のダイナミ クスについて考えよう。$t=0$において $\vec{M}(0)=M_0(\cos \chi, \sin \chi, 0)$であると仮定しよう。 $\vec{M}(t)$は時定数$T_2$で横緩和機構によって緩和し、 $T_1\gg t \gg T_2$ の時 $\vec{M}(t) = \vec{0}$となる。xy面内におけるこの緩和の後、 熱平衡状態$\vec{M}_0$に向けた縦緩和が起る。

図 11.5: $T_2^*$緩和。 (a) 時刻$t=0$では$\vec{M}$はx軸に揃っている。 (b から d) $\vec{M}$はxy面内でラーモア周波数の違いにより 次第に広がっていく。全磁束しか測定できないので、(d)のようになると 信号は得られない。
\includegraphics[width=5cm]{ns_v_5.eps}

$T_1$$T_2$に加え、環境の不均一性に起因する$T_2^*$も実験的には重要であ る。ここでは、静磁場が不均一な簡単な場合について考えよう。すなわち、 ラーモア周波数が場所毎に少しずつ異なっているとしよう。 最初$t=0$にx軸方向に揃っていた$\vec{M}$はラーモア周波数が場所毎に異なっ ているので、 図 11.5に示すようにxy面内で広がることになる。 全磁束しか測定できないので、$\vec{M}$がxy面内に分布してしまうと信号を 得ることはできなくなる。



Administrator 平成25年1月3日