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: 回転磁場 : NMRの原理 : 磁化   目次

歳差運動

$\vec{B}_0$中の$\vec{M}$のダイナミクスは
$\displaystyle \frac{d \vec{M}}{dt} = \gamma \vec{M} \times \vec{B}_0,$     (11.1)

によって決まる。ここで、$\gamma$は磁気回転比と呼ばれる物質に 固有な量である。以後、図を描くためにここでは、$\gamma > 0$と仮定しよう。 もしも、$\vec{M}$が何らかの方法で$\vec{B}_0$の向きから外れたならば、 $\vec{M}$は式 11.1に従ってz'軸の回りに歳差(回転)運動を 始める11.2。 回転角速度 $\omega _0 = \gamma B_0$となりラーモア周波数と呼ばれる 11.3。 水素や炭素のラーモア周波数はそれぞれ42.59 MHz/T、10.71 MHz/Tである 11.4。 z'軸の回りにラーモア周波数の角速度で回転する座標軸(回転座標系) を基準に観測すれば、この磁化$\vec{M}$は静止しているように見える。 従って、回転座標系において$\vec{M}$に作用している実効的な磁場は ゼロと考えることができる。回転座標系のz軸はz'軸(静磁場の向き)と 同じであり、x,y軸は磁化の回転に伴い回転する。

図: 回転座標系。 (a) 実験室系から見た場合。 回転座標系と磁化$\vec{M}$はラーモア周波数 $\omega _0 = \gamma B_0$で 時計回りに回転している。 (b) 回転座標系から見た場合。磁化$\vec{M}$は静止しており、実効的な 磁場はゼロと考えることができる。
\includegraphics[width=8cm]{ns_v_2.eps}

一般に角速度$\omega$で時計回りに回転する座標系において磁化$\vec{M}$ $\omega_0 - \omega$で回転し、実効的な磁場に対応した磁束密度は $(0,0,B_0 - \omega/\gamma)$となる。



Administrator 平成25年1月3日