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RESEARCH

重力波とブラックホール

地球上でGPSが高精度で機能しているのは、地上や人工衛星に作用する重力が「一般相対性理論」で記述できるおかげです。では、宇宙でもっとも強い重力をもつであろうブラックホールの近くでも、一般相対性理論は正しいのでしょうか?それとも、我々がまだ知らない理論がそこでは必要となるのでしょうか?ブラックホール合体による「時空の歪みのさざ波(重力波)」の初検出(LIGO 2015年)を皮切りに、 ブラックホール近傍の情報から重力理論の検証・新たな物理の探求が可能な時代となりました。 楽器が特有の音色や固有振動をもつように、ブラックホールもそれに固有の振動パターンを持ちます。 ブラックホールの「響き」を記述する理論を駆使し、重力波波形からブラックホールの響きの痕跡を見出す理論研究を展開しています。

ブラックホール合体後に生じる重力波のイメージ
ブラックホールの響き / a black hole ringing © Naritaka Oshita

重力理論・量子重力の検証

重力理論には、一般相対論だけでなく、重力場そのものの量子性を考慮した量子重力理論や、 種々の宇宙論的な問題を解決できる修正重力理論などが提唱されています。一般相対論と他の重力理論におけるブラックホールでは、 その安定性や振動などの挙動が一般に異なるため、理論の峻別・制限に役立つことがあります。 一般相対論を超えた物理がどのようなユニークな物理現象を引き起こすかを予言し、その検証可能性を吟味する研究を展開しています。

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ブラックホールからのエコー重力波 / Echoes from a perturbed black hole [Oshita et al. (2020)].

ブラックホールの揺らぎを記述する数学

ブラックホールの安定性を理解するために発展してきたブラックホール摂動論は、 今ではブラックホール起源の重力波の波形モデリングで必要不可欠な理論です。 この理論は、奥深く美しい数学的構造を持っています。これまで、Heun関数によるブラックホール摂動の解析、Mano-Suzuki-Takasugi法を用いた 準固有振動展開の収束性、exact WKB解析の応用や、Stokes幾何による準固有振動の発生源の予言などを行ってきました。 数学の力でブラックホールの揺らぎの基礎物理を理解することを目指しています。

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ブラックホール振動を記述するストークス幾何 / Stokes geometry of a perturbed black hole [N. Oshita (2026)].

曲がった時空での粒子生成・重力の熱力学

強重力領域に量子論を適用すると、多くの非自明な現象が生じることが予言されています。 ブラックホールが少しずつ粒子を放射しながら小さくなる「ブラックホールの蒸発」や、 初期宇宙の激しい加速膨張で生じる「粒子生成」は、重力と量子論の整合性や物質の起源の理解の鍵として活発に研究されています。 この描像に基づいた「量子揺らぎの古典化やエントロピー生成」、「ブラックホールの情報問題」、「ブラックホールの蒸発機構」に関連する理論研究を展開してきました。

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ブラックホールの情報問題 / Black hole information problem

真空崩壊の物理学

真空状態の量子トンネリング効果である「真空崩壊」は、初期宇宙における相転移現象および宇宙論的な重力波源として注目を集めています。 強重力系での量子効果に着目し、重力理論、量子論、宇宙論、素粒子論などが有機的に絡み合う現象の理解にも取り組んできました。

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真空崩壊の概念図 / Schematic picture of vacuum decay © Naritaka Oshita

量子宇宙論

これまでの宇宙の観測から、宇宙は幾何学的に平坦で、どの方向もどの場所も特別ではないという描像が確立されました。 これはビッグバン以前に空間の急激な加速膨張が起きたとする「インフレーション宇宙論」で説明でき、この描像は現代宇宙論の標準的シナリオとされています。 では、インフレーションする宇宙はどのようにして現れたのか?その前はどのような様子だったのか? 強重力領域である宇宙誕生の瞬間と直結する基礎的な問題にも、理論的側面から取り組んできました。

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量子トンネリングによるインフレーション宇宙の創生 /
Creation of an inflationary universe from a quantum tunneling © Naritaka Oshita

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近畿大学 東大阪キャンパス 31号館 3階 重力物理学研究室
Email: oshita[at]phys.kindai.ac.jp