OVERVIEW of SUIM 超高層大気観測X線カメラSUIM
SUIMは、高度100 km付近の超高層大気を観測するために開発したX線カメラです。米国Aegis Aerospace社が運用する国際宇宙ステーション(ISS)の外部実験プラットフォームMISSEに約6か月間搭載し、地平線(地球縁)方向を向いて観測を行う計画です。SUIMには近畿大学、宮崎大学、京都大学、東京理科大学などが共同開発した独自のX線SOI-CMOSピクセル検出器XRPIXを搭載しています。XRPIXは、半導体SOI(silicon-on-insulator)技術を用いたイメージセンサーSOIPIX(ソイピックス)の一種で、常温でも高いX線感度を持つことが特長です。本プロジェクトがXRPIXの初めての宇宙実証となります。筐体およびスリットコリメータは、近畿大学と共同研究を行う株式会社エクセディが製作しました。SUIMは2026年に打ち上げられる予定で、約6ヶ月間の運用期間終了後に地球へ返還される予定です。宇宙環境に曝された後のXRPIXの性能を評価することで、次期X線カメラの開発に活かします。
METHOD 超高層大気の観測方法
SUIMが狙う高度100 km付近の超高層大気は、気球や人工衛星による「その場」観測が難しく、観測データの乏しい領域でした。こうした状況の中で、X線天文衛星を用いて超高層大気を観測する手法が実証されました (1, 2)。X線天文衛星が地球を周回しながら天体を観測していると、天体が地球によって一時的に隠されることがあります。天体が地球に隠れる直前・直後には、天体からのX線が地球大気によって吸収・散乱されて強度が低下します。この強度変化から大気密度を測定できます。いわば、大気の「レントゲン写真」を撮るような方法です。SUIMはこの原理を用い、大気密度を継続的に測定することを目的とした超高層大気観測専用のX線カメラです。SUIMではX線カメラを地球の水平線方向に向け、地球大気を通過してきた宇宙X線背景放射(=宇宙のあらゆる方向から到来するX線放射)を観測しつづけます。宇宙X線背景放射の強度はあらかじめ分かっているため、観測された減衰量から大気の密度を測定できます。
SPECIFICATIONS 特徴
| 大きさ: | 290 x 120 x 91 mm2 |
| 質量: | 3.3 kg |
| 消費電力(平均): | 7.3 W |
| 最大ダウンリンク量: | 最初の4週間 1 GB / 週、残りのミッション期間 7GB / 月 |
| 観測機器: | スリットコリメータ + X線SOI-CMOSピクセル検出器XRPIX(2素子) |
| 可視光CMOSカメラ(1台) | |
| 打ち上げ: | 2026年(予定) |
| 搭載プラットフォーム: | MISSE22(予定) |
NAME AND LOGO 名称とロゴの由来
「SUIM」は「Soipix for observing Upper atmosphere as lss experiment Mission」の略称で、観測対象である高度約100 km付近の超高層大気が「翠色」の大気光を発することに着想を得ています。さらに、近畿大学が世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功したことにちなみ、宇宙を「泳ぐ」ように活躍してほしいという願いを込めて命名しました。「SUIM」のロゴは、近畿大学理工学部理学科物理学コース・信川久実子准教授の研究室の学生と、文芸学部文化デザイン学科・後藤哲也教授の研究室の学生が共同でデザインを制作しました。複数案の中から、第2回プロト・フェス(主催:近畿大学 デザイン・クリエイティブ研究所)でのアンケートを経て、西堂知萌さんのデザインを採用しました。星が連なるデザインは、宇宙の天体から到来するエックス線を用いて大気を観測する「SUIM」のコンセプトと、そこから得られる観測データを象徴し、緑色の曲線は地球を周回するISSの軌道ならびに緑色の大気光を表現しています。デザイン・クリエイティブ研究所のwebページで制作の様子を紹介しています。