過去が未来に影響を与える機構のことである。その意味で振子は初期状態が未来の状態を 決定するので、ダイナミクスが存在していると言っても良い。 冷蔵庫に水を入れて凍らせるときも、水温はどれだけ過去に 熱を奪ったかに依存し、ダイナミクス(将来の温度を決定する機構) が存在すると言っても良いであろう。
ダイナミカルシステムを考える場合、過去の状態を記憶する 機構が必ず存在する。例えば、振子の場合ならば振子の持つ エネルギーが「記憶」の役割を果たすし、水を凍らせる場合には 水の持つ熱量が「記憶」になる。様々なダイナミカルシステムには 固有の記憶媒体によって、記憶が担われていることに注意する 必要がある。人間の場合には外界の環境に合わせて、 文字通りの「記憶」がそのダイナミクス(個人の行動様式)を 決定する。
この「記憶」の内容をシステムの「状態」と呼び、 ダイナミカルシステムの過去と未来を繋ぐインターフェイスになる。 例えば、真空中を外力を受けずに運動する質点というダイナミカル システムを考えよう。ダイナミクスを決定する機構は ニュートン力学であり、このシステムの将来はこの質点の位置と 運動量が分っていれば分る。すなわち、質点の「状態」は その質点の位置と運動量によって記述することができる。このことは 既によく理解していることであろう。
工学的な観点からは「入力」と「出力」を もつダイナミカルシステムが重要である。入力はそのダイナミカルシステムを 制御するための操作を表し、出力はその制御のためのシステムの観測量を 表している。