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研究内容
 
0.1nm程度の波長を持つX線の回折現象を利用すると、原子サイズレベルで物質の構造を知ることができます。 
 我々は,X線の反射と回折を組み合わせたX線反射率法という測定法により,液体の表面/界面で起こる様々な現象を調べています。特に,界面で起こるタンパク質の変性過程を独自に開発した装置を使って観測しています。タンパク質の変性のメカニズムを明らかにすることによって,病気の原因であるタンパク質の変性を抑制することにつながります。
 一方、最近では、表面張力の差によっておこるマランゴニ対流にも着目しています。世界で初めて対流の様子を分子レベルで観測しました。
動画

液体の表面って?
液体の表面は、気相と液相を分ける界面です。大きな密度差がある相の間にあるにもかかわらず、その厚さは1nmほどしかありません。その厚さは、表面の熱揺らぎによって生じるさざ波(capillary wave or ripplon)の振幅に相当します。
 液体の表面にいる分子は、非対称な環境ゆえに、液体内部の分子とは異なる振る舞いを見せます。

白金リングによる表面張力測定


タンパク質の変性について
生命活動を担うタンパク質はアミノ酸が1次元のひも状に連なった分子です。例えばアミノ酸が100個連なると、3の198乗通りの立体配置が考えられますが、生体内のタンパク質は一瞬にして固有の立体構造をとり、その機能を発揮しています。現在のところは、アミノ酸の配列から立体構造を予測することは困難ですが、アミノ酸には極性を持つもの(水に溶けやすい)と持たないもの(水に溶けにくい)があり、水の中では大抵、非極性の部分を内側に折り畳んだ構造をとっています。ところが、空気に触れると、非極性の部分を外側に出すように変性します。
 
メレンゲは卵白中のタンパク質が空気に触れて変性したもの


X線反射率法とは
界面の構造を調べるための測定手法です。X線を液面すれすれに入射させると全反射します。その時、X線は液面にわずかに浸み込むだけなので、X線の反射率から液面の構造を知ることが出来ます。
 例えば、8KeVのX線の水に対する全反射臨界角は、わずか0.15°ですので、全反射条件を実現すること自体が非常に難しい実験です。我々は、時間変化する試料を測定するために、迅速測定のできる装置を開発しています。
EDXR-FTIRシステム
X線反射率法と赤外吸収分光法を組み合わせた当研究室オリジナルの装置です。FT-IRからはタンパク質の局所構造、X線反射率法からは外形の情報が得られます。サーモフィッシャーのFT-IR装置を組み込むことができるように、本研究室の卒研生が設計して製作しました。白色X線を使い、短時間で測定が出来ます。

2015年に科研費基盤Cで製作し,当研究室に設置してあります。
SPring-8の溶液界面X線反射率計
超平行ビームをもちいた角度走査型のX線反射率計です。SPring-8のアンジュレータ光源を用いて、反射率を10-10まで測定することが出来る非常に精度の高い装置です。

2007年にSPRUCのソフト界面科学研究会のメンバーが立ち上げ,SPring-8のBL37XUに設置されています。
KEKの波長・角度同時分散型反射率計
集光ビームをもちいたX線反射率計です。角度走査型の反射率計の100倍以上の速度で測定をすることができます。

2012年にJST先端計測プロジェクトで製作し,PF-ARのNE7Aに設置されています。


解説記事
X線反射率法
超音波を使った液体の微粒化
表面張力

その他 読み物