Bose-Einstein凝縮体における数学的側面
日時
2020 年 2 月 10 日(月) 9:30 から 16:30 まで
場所
近畿大学 東大阪キャンパス 31号館 501号室
プログラム
9:30-10:30
1. 田中 康資(産総研)
「量子分割とダークマイスナー」
概要ファイル
10:45-11:45
2. 古川 俊輔(慶応大)
「多成分ボース気体の量子ホール物理:対称性による保護と富化」
対称性が課されたもとで現れる多彩なトポロジカル相に注目が集まっている。
対称性のもとで初めてトポロジカルな性質を獲得する相を「対称性で保護されたトポロジカル相」、
もともと持っていたトポロジカルな性質が多様化されて現れる相を「対称性で多様化(富化)された
トポロジカル相」と呼ぶ。冷却原子系の持つ高い操作性を利用して、これらの相を実現できるかどうかは興味深い。
冷却原子系においては、構成原子の多様さに加え、近年、磁場やスピン・軌道結合と同等の効果を光学的に
誘起する人工ゲージ場の技術も発展している。ここでは、人工磁場中のn成分ボース気体の示す量子ホール状態
についての我々の最近の研究を紹介し、対称性による保護と富化について議論する。
昼食
13:00-14:00
3. 福泉 麗佳(東北大)
「BECモデルの理論数学による正当化と渦の解析」
数学分野におけるGross-Pitaevskii 方程式の解析方法や
結果について紹介をする。特に、以下の項目について取り上げる。
1) 光学トラップ下で捕まえた凝縮体へのレーザーのゆらぎの影響について
2) 有限温度BECモデルに対する統計力学的アプローチ
3) 準安定渦配置間で起こる配置推移(相転移)の平均時間を求める数値スキーム
14:15-15:15
4. 小林 未知数(京都大)
「多成分およびスピン自由度を持つボース系のBKT転移」
空間2次元の系において起こりうるBerezinskii-Kosterlitz-Thouless (BKT)
転移はトポロジカル欠陥である量子渦の生成・乖離によって引き起こされる
特殊な超流動相転移である。また、多成分BECやスピノルBECでは、系の内部自由度に
よって様々なトポロジカルチャージで特徴づけられる量子渦が現れる。これらの系に
着目し、量子渦のトポロジカルチャージがBKT転移に与える影響、特にBKT転移を
起こすか否か、あるいは超流動に対する普遍的関係式をどのように変えるかと
いう点に焦点を当てた、我々の計算結果を紹介する。
15:30-16:30
5. 中原 幹夫 (近畿大・上海大)
「F=2 BECにおける3次元skyrmion」
スピン2のサイクリック相,およびバイアキシャル・ネマティック相のBECにおいて,
トポロジカルに安定な3次元スキルミオンの生成を解析する.この構造は3次のホモトピー群で分類される.
秩序変数のもつ対称性により,3次元球面を秩序変数の多様体に写像した時,その写像度は大きな数になる.
生成過程は3次元のGross-Pitaevskii方程式を数値的に解いて解析される.
サイクリック相もバイアキシャル・ネマティック相も,強磁性相への転移に関して不安定であるが,
我々の解析によると,スキルミオンは実験的に観測されるのに十分な寿命をもっていることが示される.
本研究会は以下の日本学術振興会 科学研究費の援助を受けて開催されます。
基盤研究(C)「複雑な秩序変数を持つ量子凝縮体におけるトポロジカル励起」(研究代表:中原幹夫)
基盤研究(C)「光格子中の長距離相互作用を有する冷却原子系における非平衡量子ダイナミクスの解明」(研究代表:笠松健一)
世話人
中原 幹夫 (近畿大学・上海大学)
笠松 健一 (近畿大学)